2015年 02月 28日
以前から一度訪ねてみたいと思っていた「東京たてもの園」を見学する機会がありました。目当ては「前川圀男邸」です。前川國男は日本の近代建築の旗頭でした。学校卒業と同時にシベリア鉄道を乗り継ぎコルビジェの元へ向かったことは有名な話しで、初期の作品にはコルビジェの大きな影響が見えます。前川が戦時中に建築した自邸がこの園に移築されています。そのどっしりとした骨太な構成にはコルビジェの影響と同時に、日本建築の細やかなディテールが見られます。戦時中の建築制限(100㎡以内)で建築されていて、現代では小住宅に属する建築ですが、そんな感じは一切ありません。やはり空間の力でしょうか。 居間で小一時間ほど過ごし、彼がどのようにここで暮らしていたのかと思いにふけっていました。前川の晩年建築家協会のセミナーに不自由な体で出席され、盛んに図面の黒く塗りつぶされるところの重要性を語っていたことを思い出していました。言葉も聞きづらかったこともあり、未だにその重要性を私自身理解出来ていません。前川國男は残した作品もさることながら、建築家の社会的責任を追求したその生き方に私は尊敬の念を抱いており、彼が過ごした自邸を訪ねることが出来たことは幸いでした。 日本的要素が強い居間空間 日本民家的な力強い構成 #
by goi-51
| 2015-02-28 16:33
2015年 01月 31日
2015年も最早1ヶ月がたってしまいました。年末から年始に掛けて東北宮城の被災復興の計画に携わる機会があり、改めて震災について考える時間が持てました。倉本聰さんが文藝春秋の2月号で風化する震災について述べておられましたが、今日本は喉元過ぎれば元の黙阿弥的な状況に陥っているという指摘には共感を覚えます。 経済・成長というがそれが本当に最重要事項なのか?電力供給を筆頭に様々な問題が常に供給する側の視点で議論されているが、本来消費する側の視点こそ重要ではないか?と述べていることは正論だと思います。供給出来なければ供給出来る範囲で消費すればいいだけの話しです。震災で私たちはその視点に一度立ち返ることを学んだと思うのですが、いつの間にか元に戻っている気がします。 仙台空港の近く、被災地に建設されている「千年希望の丘」の一角で大変寒い日にも拘わらず、年配のご婦人がベンチに座り遠くを見つめている光景を目にし、当然のことながら被災者の方々には震災は終わっていないことを身に染みて感じました。 この計画を通して少しでも復興のお手伝いが出来れば幸いだと思っています。 #
by goi-51
| 2015-01-31 17:38
2014年 12月 25日
雑誌「致知」で建築家坂茂さんと日本の木造建築に新しい技術をもたらしている㈱シェルターの木村一義さんの対談記事が掲載されていました。木村さんは坂茂さんとのコラボで新しい木造技術の開発を進めている人で、㈱シェルターは注目される木造ベンチャー企業といえます。この対談の中で木村さんは「社会から愛されている建物であればそれが紙の建築であっても百年でも二百年でも残ると思うんです。ところがいくら鉄骨やコンクリートの建物であってもクライアントを幸せに出来ず社会から愛されない建物は木造より早く解体される運命にあると思うんです」と述べていますが、全く同感です。建築は販売されるものではなく創られるべきものでそこに創る人の思いがこもっていなければ単なるものになってしまいます。ものになった建築はクライアントや人に愛されることはないと思います。 また「日本はそもそも木造建築の国で木造建築を世界で最も建ててきたはずなのに、ここ五十年で完全に世界に遅れをとって来ました。」とも仰っていますがこれも全く同感です。先日木造の先進国とも言えるオーストリアの木材工場や高層木造建築にふれたばかりで特にそんな思いを強くしました。 木造の新しい技術開発と伝統的工法の継承は日本の建築界において最重要な課題と考えています。私の事務所でも木造の建築に力を入れていきたいと考えています。 #
by goi-51
| 2014-12-25 09:31
2014年 12月 24日
先日「五井建築塾」で「素の力」をテーマに話しをしました。「素」というのは「装わないで生地のまま」という意味で、そこにはものの本質が顕れると考えられます。私たちは「素の力」を持つ建築を目指したいと思っています。 「素の建築」の対極が「装いの建築」といえるでしょう。目に見える表層を装うことは例えばすてきなインテリアとかすてきな外観などと評価されます。それを絶対的に否定する勇気はありませんが、装いが評価される建築ではなく、建築の骨格が持つ力が評価される建築を創ろうではないかということです。人間で言えば鍛えられた肉体美というべきものでしょうか。少なくともお化粧美人ではありません。 「素の力」を発揮するには、平面、空間の骨格が明解であり、表層は材料の本質が顕れているものでないといけません。それは「素材」と呼ばれうる材料です。「素材」というと伝統的な木とか左官とか和紙とかだけを指すと思われがちですが、それだけではありません。時代と共に「素」の材料が生まれてきています。スチールもガラスもタイルも集成材木その仲間に入ると思います。しかし、そうではない「まがい物」もいっぱい世の中に存在しています。むしろその方が圧倒的に多いのが実情で、経済的な理由でそのような材料を使わざるを得ない場合は大変残念な思いを持ちます。 私たちは新しく生まれる様々な材料について、何が「素」なのかそうでないのかを見極める力をもたないといけないと思っています。そして「素の力」を持つ建築を創っていきたいものです。 #
by goi-51
| 2014-12-24 14:09
2014年 11月 29日
今回の旅は木材産出国のオーストリアにおける木造建築を見ることがひとつの目的でした。チューリッヒでは日本の建築家坂茂さんが設計した新聞社ビルを見学しました。元々のビル(多分鉄筋コンクリート造)に増築した5階建ての木造CLT建築です。木材産出国でCLT技術が進んでいるとはいえ、市街地の中で木造の高層ビルはそんなにあるわけではありません。そんな中でこのビルはひときわ光を放っているように感じました。日本的仕口がオーストリアで受け入れられたようで、細かいディテールがきれいな建築でした。 ルーデッシュでは木造の市庁舎を見学しました。(建設当時の市長さんが懇切丁寧に案内してくれました。)設計はオーストリアの建築家ヘルマン・カウフマンです。多くの木造建築を手掛け、2007年には優秀なサスティナブル建築に送られる世界的な賞も受賞されています。無駄のないすっきりとしたデザインはプロポーションが非常に良く、また素材の使い方がうまいと感じました。会議室では日本で木造の下地に使用する垂木のようなものを、加工しないでそのまま使っていたのが印象的で、こんな使い方もあるのだと感心しました。 いずれも秀作でいい刺激を受けました。 坂茂さんのtamedia社(外部) tamedia社(内部) カウフマンのルーデッシュ市庁舎(外部) ルーデッシュ市庁舎(内部) #
by goi-51
| 2014-11-29 16:15
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